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【参加レポ】「道雪解議-北海道を失うと日本、世界は何を失うのか?-」

2024年8月17日に札幌市で開催された、北海道の経済と文化を問い・往来するフォーラム「道雪解議」

全国から「Community Based Economy」の循環を通して、地域とともに発展しようと取り組む地域企業で活動する方々をゲストにお呼びし、
「経済・文化」「金融」「観光」「教育」の4つのテーマを設けてセッションを行いました。

道雪解議の主題は
「北海道を失うと、日本は、世界は何を失うのか?」
このメインテーマを掲げながら、各セッションから生まれた問い、そして希望の兆しについて皆さんにお届けします。


◾️「道雪解議」とは

【道雪解議の由来】
「みちばた」で話すような気軽さで、“問いを往来”する。
「ゆきどけ」のように、そこにあった当たり前が“とけていく”。
「うちとけ」が、“共通の願い”を生み出す素地となる。

2021年春に京都で開催された「Community Based Companies Forum(CBC Forum)〜希望の兆しかもしれない。見本市〜」のバトンを引き継ぎ、2024年北海道での開催が決定。

「北海道で積み重ねられた、なくてはならないものはなんだろうか?」
北海道が開拓されて150年。歴史の中でどんな変化があったのか。

そして「北海道を失うと、日本は、世界は何を失うのか?」

この問いをきっかけに、経済視点と文化視点で北海道を見つめなおす。北海道の「文化」と「経済」が創り出す新しい価値を探求し、セッションや対話を繰り広げていくフォーラムです。

◾️各軸を元に問いと対話が広がる5つのセッション

当日はセッションごとに登壇者によるトークセッションを実施した後、トーク内で立てられた問いをテーマに参加者同士での対話を行いました。

予定調和ではない、新鮮な「問い」から生まれた「対話」の一部をお届けします。

#オープニングセッション

一般社団法人リリースの風間さんから「Community Based Economy」の概念や言葉の背景をうかがい、弊社代表柴田が本日のフォーラムにかける想いを語りました。 悪天候の影響でやむおえず登壇ができなかった大室先生からキーワードとなるお言葉をいただき、セッションは始まりました。

「本州と異なる時間が流れる北海道で
今ここで私達は何を感じるんだろう。」

大室悦賀 先生 より

大室先生:「いま私達が囚われている“時間”という概念。時間ではなく、今の連なりをベースに考えると、未来は勝手にやって来るものであり、すでに存在しているもの。“未来はこうなったらいいな”と願うものではなく、”未来はこうある”ものとしてすでに決まっていると思うのです。もっと今ある感覚を重視したほうがいい。
今はほとんどの人が思考を重視して、言語的なものに囚われてしまっています。思考を一旦置いて、まずは自分たちの動物的な感覚に重きを置くことから始めれば変わるはず。」

柴田:「今日のセッションの楽しみ方は登壇者の方の話を聞いて、参加者が何を感じられるか。直感的に感じたことをシェアしてもらい、参加者の皆さんとすでにある未来を一緒につくり上げていくことで、フォーラム後によりよい景色を見られるんじゃないかと思います。北海道という本州と異なる時間が流れる空間で、ここでの時間の流れに身を委ねたとき何を感じるのかというのが楽しみですね。」

「つくりたい未来があって、そこに向かって走っていくのだと思います。逆に僕たちはつくりたい未来から勝手に遠ざかっているなら、それは何から距離を取っているんだろう。それはひとりひとりとの対話の時間かもしれない。お店で店員さんと会話しながら物を購入したり、焚き火を囲んで話す時間だったりするのかもなと思いました。これも大室先生と話しているときに僕の中に生まれた問いです。みなさんも本日の対話を通して、今までと違う思考だったり、ひらめきを手に入れられるんじゃないかと思います。」

#Session1 「経済/文化」を軸とした、地域づくりと事業づくり

「経済/文化」を軸とした、登壇者の皆さんの地域づくりと事業づくり
についてお話をいただき、残していくべき文化は何かについて考えていきます。

「地域での新しい挑戦。ローカルへの想いの伝え方とは?」

金田:「例えばまち中に公園をつくろうとしたとき、そんなことをしないでくれという人が必ずいると思います。そのような答えのない問いに対して理解や共感を促すことが必要な場面があります。地方で新しいことをするとき、受け入れることが怖いと感じる方もいるはず。その時、皆さんはどのようにして自分の想いに共感してもらって、継続できる活動にしているんでしょうか。」

林:「自分は行政が管理しているようなパブリックスペースでの活動が多いので、少し特殊だと思いますが、対話と行動を連鎖させることを意識してやっています。行動ばかりだとただのイベント屋になってしまいますが、協力してくれる行政と話をしながらフラットに合わせていくようにしています。最近は社会課題を追求する方が増えている。そういった方々がもっと知られるべきであると同時に地場で頑張っている方々もいる。そこがお互いに吸収し合う場、対話と行動を繰り返すことのできるVTみたいなものがあると大手や中小、社会経済と文化の間をぐるぐると常にモヤモヤし続けられるじゃないかと思います。」
岡村:「僕は日本をどうにかするためにはもう一度京都をなんとかしなければならないと思ったのですが、何百年も続く歴史や文化の重みを大切にする京都の中心地の人々を動かすことは難しかった。そこで下京区を選んだ。地元の人に言えばわかると思うんですが、ギリギリ京都と認められる地区ですね。(笑)かつ僕たちは新しく事業を起こした身なので、歴史や文化の重みを引き継ぐ必要もない。ギリギリ京都という少し自由度の高いフィールドを選択して、京都市内外の人を巻き込みながらやってきましたね。」

#Session2 お金に“意志"を灯す

社会に流れるお金に意志を灯すことで、資金を「志金」に変換させ、
社会を変える“志源”を生み出す実践者のチャレンジを紹介していきます。

「未来と公共・地球への投資を誰が金銭的に負担をするのか?」

黒井:「私は教育の分野に携わる中で、経済性を持たせるのが難しいと感じることが多くあって、その時は未来や地球というお金を持たないものに自分は雇われているのだから仕方ないと思うようにしています。つくりたい社会や未来を追い求めると、経済的な利益を出せない場面が多くあると思いますが、未来や公共、地球への投資は誰か金銭的に負担するものだと思いますか。」

久保:「結論的にはみんなで負担していきましょうという答えなんですが、お金を出す順番と矢印の向きが重要だと思っています。ソーシャルインパクトボンドとは、先駆的でまだ利益が出るかわからないソーシャルビジネスに投資することを指すのですが、最初にお金を出すのは投資家です。クラウドファンディングなら応援したい人。こういった最初に誰がお金を出すかが重要で、ここにフォローアップマネーをつけていくことも必要な仕組みだと思っています。最初にお金を出した人がいて、かつサービスが成功すれば次の人がお金を出すという順番をつけることが大切。だから、最初にお金を出してくれた人が報われる社会であってほしいし、そういった仕組みづくりを自分はしていきたいと思っています。」

山川:「今までお金を出してもらえなかった世界にお金を出せる社会になったらいいなと僕も思いました。でもここでモヤモヤしたのは、お金は持っている人しか出せないということ。そこでヒントになるのが沖縄のおばあの言葉。沖縄は幸福度が高い都道府県といわれるのですが、溢れた分は自分じゃ持てないんだから誰かに与えなさいという言い伝えがある。それがすべてなんじゃないかなと思います。」

#Session3 日本の価値を感じる観光とは

未来が歓迎する今をつくる『観光』とは何かを観光都市でもある北海道・京都・沖縄のそれぞれの視点から日本らしい観光について紐解いていきます。

「1つの地域での観光で伝えきれない、
日本縦断することの良さとは?」

赤井:「八雲は外国人が1ヶ月くらい滞在することが多いんですが、八雲だけでは1ヶ月をコンテンツで埋められる体験はない。外国人たちはもっとローカルな体験や出会いを求めているけど、どこに行けば出会えるかがわからない。今は南北海道で連携して観光事業をやろうという動きはしていますが、もっと大きなマスで、北海道も大きいので広域で楽しんでもらいたいですね。日本は文化が乱立しているので沖縄の琉球文化、北海道のアイヌ文化など1つの国で感じられるのはすごいことだと思っています。」

比屋根:「共通して大切にしていきたいことは平和と調和を考えること。人としてどうあるか、自分や他者との対話、ありのままでいいよねという価値観を与えたいと思っています。自然に触れることでロジカルの無意味さやちっぽけさを感じてもらいたいですね。」

仲田:「今回の旅は元々の日本人を取り戻していく旅。自分たちが日本人であること、当たり前すぎていて忘れていた感覚を思い出す旅だと思っています。京都に関しては何百年とある歴史のなかで本物が集まるまちなので、何を美しいと思うかという美意識を学ぶ旅ができるんじゃないかと思いますね。」

#Session4 教育が作りだす、美しい北海道の風景

北海道で生み出されている「ボーダレスな教育環境」を提供している皆さんからお話を聞き、これから教育を通じて北海道で生み出される美しい風景を探求していきます。

「あなたの描く理想の教育風景とは?」

井内:「世代関係なく、やりたいことができる環境ですね。好きなことに没頭、夢中になりながら自分をつくっていくというのが、じぶんのなかにある教育のあり方の理想。その風景が少しずつ見え始めているので、根付いていくためにはどうしたらいいかを考えています。しかし今見えてきているのは学校教育以外の社会教育の部分。ではこの理想の風景を学校教育の場面につくるにはどうしたらいいのかはもう少し時間をつくって考えていきたいと思っています。」

嶋本:「様々な人が多様な価値観に出会えることが重要だと思っています。以前大学生と話したとき、周りが就活してないから、就活をしないという子がいた。これが可能性の認識差を超えていくためのキーとなる部分だと思っていて、多様な人に出会える環境があったら違ったんじゃないかと。一つのまちだと人やお金も有限なので、様々なまちと協力して多様で多量の人やものと出会っていくのが理想の風景ですね。」

岡田:「教育において、大人としてやるべきことはやりたいことを成し遂げられる選択肢を増やしてあげること。ある子供が将来経営者になりたいといった時、先生は危ないからやめなさい、いい大学に入っていい会社に入りなさいと言ったという話を聞きました。これは誰も悪くない、ただ選択肢として知らなかっただけ。その先生が楽しそうに経営をしている大人や経営者を知っていれば、その子供は経営者という選択を選べたかもしれない。そのためには学校教育を先生方だけに任せず、僕たちが選択肢を増やしてあげることができたらと思いますね。」

■おわりに

「全員がモヤモヤすることが本日のゴール」
弊社代表 柴田がイベント冒頭に掲げた通り、明確な答えのない「問い」が沢山生まれるフォーラムとなりました。

「北海道を失うと、日本は、世界は何を失うのか?」
道雪解議は、この問いに対しても明確な答えを持ちません。

1つの問いから沢山の思考が行き交う時間。
参加者の中には新たな答えを見つけたり、更に悩んでしまったり。
また自分なりの答えを貫いた人もいたのではないでしょうか。

とけるでは、この素晴らしい時間をまた来年もつくろうと思っています。

今回で答えが見つからなかった方も、見つかった方も、
お互いの当たり前が解け合うこの時間をまた共に過ごしましょう。

皆さんにお会いできる日を楽しみにしております。